かくも早く死する命と思はねばあそびに来よと言ひて別れつ
八上彦一 (「私語の刻」)
目にとまったこのような句が私に強く迫るのでした。
「またくるね!」
「また会おうね!」
郁代の友達は皆そう言って、
又会えると信じて疑わなかったはずです。
その年の2月、シドニーを訪れた時も
「また遊びにくるね!」
と郁代は言ったのでした。
「帰る家はシドニーに用意してあるから、いつでもおいで」
とまで友達は言ってくれました。
「もう、このシドニーには二度とやってこれないのだ」
と、その時郁代はつぶやいていたことでしょう。
郁代にとっては、お別れの旅でしたから・・・。
その時の胸中を思うと、涙が出てとまらなくなります。