2009-03-01から1ヶ月間の記事一覧

猫を抱いて

高校に入学して間もない頃、近所の猫が車に轢かれたことがありました。 家の前が県道に面していて、よく事故が起きるのです。学校から帰ったばかりの郁代は泣き叫んで、だれ彼となく頼み込みました。 「お願いします。誰か病院へ連れて行って!」間もなく帰…

入試の作文は「春」

郁代はエピソードの多い子だったなあ。 いつもびっくりさせられ、次第に私の方がそのことを楽しんでいたように思います。「あなたにあえてよかった」にこんな場面があるのですが、 春になると思いだして笑ってしまいます。 そして・・・涙が出てきてしまうの…

法然上人の目 (五)

法然上人の目(五) 親鸞 203 五木寛之 「そのおつげのあったあとに、一人の女性(にょしょう)があらわれて、わたくしに告げたのです。吉水へ、おいでなさいませ、と」 「それでこの吉水へやってきたのか。 そしてきょうまで百日のあいだ、一日もかかさずわ…

悲しみが集まった方が

昨日に続いて、星野富弘さんの詩画より。 よろこびが集まったよりも 悲しみが集まった方が しあわせに近いような気がする 小菊 あなたは私が 想っていたほうからは来なかった 私が願ったようには してくれなかった しかし あなたは 私が望んだ何倍ものことを…

二番目に言いたいことしか人には言えない

『星野富弘詩画展』が金沢で開かれています。 やわらかな春の陽に包まれたような会場は、私と郁代の語らいの場でもありました。涙がとまりませんでした。 再発がわかって帰国した郁代は、これからの時間をどう使おうかと悩んでいました。 やりたいことを一つ…

もの言わぬものへの思い

茂木健一郎さん 2009/03/24 のブログは、 30歳前半の自著『生きて死ぬ私』からの引用でした。 私の心は、もの言わぬものたちとともにある、と。 「見えないけれど大切なこと」、 もの言わぬミクちゃんを載せたすぐあとに出会った偶然に、 とても驚きました。…

広がる世界

触る、上る、開ける、描く、覗く・・・。世界はどこまで広がっているんだろう?世界はなんとおもしろいんだろう・・・。 もういいかい・・・まあだだよ・・・。 「あれ、おねえちゃんはどこかな?」] 「ひとりでのぼれたよ」 ここにいるのは、mikuちゃん(1…

選択ということ(九)

選択(せんじゃく)ということ (九) 親鸞 197 五木寛之 「だってすごく簡単なんですもの。仏さまのお慈悲を信じて、ただ南無阿弥陀仏ととなえるだけ。 そのほかのことは、なにもしなくてよい、 ただ、信じて、お念仏をとなえればよいといわれれば、 これほ…

さびしいときは心のかぜです

さびしいときは心のかぜです。 せきして、はなかんで やさしくして ねてたら 1日でなおる これは大ちゃんこと「原田大助」くんがつくった最初の詩です。ある日、私は病気で元気のない友達になんにもできないことを悩んでいました。すると「山もっちゃん、ど…

見えないけれど大切なこと

「見えないけれど大切なこと」を山元加津子さんはブログを通じていつも教えてくださいます。 養護学校の山元先生と大ちゃん、はじめは気持ちが通じ合えなかったふたりが、仲良くなり、大好きどうしになって、やがて心が通い合うようになっていきます。 いち…

さみしかった夏休み

小学生のいくちゃんは誰とでも遊べる子だったから、母が振り返ってくれなくても、寂しくなんかないと、私は勝手に思い込んでいました。 それが間違いだったと愕然としたことがあります。 私の著書「あなたにあえてよかった」に、こんな場面があります。 八歳…

運動会の絵

郁代が一年生の時の「運動会の絵」が残っていました。 私はこの絵が大好きです。何て沢山の人が描かれているでしょう。「紅白玉いれの競技」参加者が27人。手前の「見学する小学生が17人。右側保護者席に、9人。来賓のテントに3人。青テントの中は放送係でし…

本が好き

Sちゃんは毎日、学校の図書館から本を借りてきます。 どこへ行くにも、小脇に本をはさんで・・・といっても過言ではありません。 好きなものは好き!という感じなのです。「ハリーポッター」が特に好きなんだそうです。 昨年、新聞の「声」欄にSちゃんを書い…

21世紀美術館へ

孫のSちゃんは今は5年生ですが、小さい頃から大人の言葉に敏感で、 自分が覚えた言葉を使って楽しんでいました。 「雲ひとつない青空」 もその一つで、小さい子が空を見上げては、「おばあちゃん、ほら、雲ひとつない青空!」 というわけです。 昨日は「雲ひ…

僕らは少年探検隊

郁代が亡くなってから、 「思い出」や「エピソード」を友人から沢山頂きました。 初めて知ることばかりで、 もう一度郁代に会えて本当にうれしかったです。 友達と過ごした時間の中に、 生きた証をしっかり残して郁代は旅立ったのでした。 そして、これらの…

吉水の草庵にて  (十四)

親鸞188 吉水の草庵にて (十四) 五木寛之 「目には見えずとも、この世界にはたくさんの仏さまがいらっしゃる。 それら数々のみ仏の中で、阿弥陀仏という仏さまは、この世に生きる哀れな者たちを決して見捨てない、と固く誓われた仏さまじゃ。 罪おおきわれ…

賜ったいのち

昨夜のドキュメンタリー番組は、筋肉がなくなる難病に向き合う、 32歳元客室乗務員の方の『今を生きる』お姿でした。お父さんの言葉がずっしりと、胸に響きました。 「代わってやれるものなら、代わってやりたい!」 その娘さんの「今、ここを生きる」尊いお…

あなたの意志と思うから

「あなたにあえてよかった」は最初自費出版したものでした。 郁代の友人や、オーストラリアの方々にお礼として届けるためでした。 「第二部」には、郁代に頂いた60人分の手紙が載っていました。後に出版社が、「第二部」を除いた「あなたにあえてよかった」…

会いたい人のところへ  風になって

セカンドリーグ「のんびる」リポーターの佐々木和恵さんが 「あなたにあえてよかった」を紹介してくださっています。 有り難うございます。 大浦静子さんのブログにはじめてお訪ねした時、静子さんが、亡くなったお嬢さん、郁代さんのために、静かに祈ってい…

おまかせ

五木寛之氏は講演でよく次のようなお話をされます。 偉大な方便 五木寛之の言葉 親鸞までは「帰命の念仏」なんですが、蓮如からは「報恩感謝の念仏」というふうに教えるようになったんです。 つまり、「なんまんだぶ」というのは何ですかとお百姓さんに聞か…

吉水の草庵にて  (十)

小説「親鸞」で、五木寛之は、実は自分自身を語っているように私には思えます。金沢が第二のふるさとと自認する五木さんのお話を何度もお聞きしたり、多くの著書を読んでそう思うのです。 吉水の草庵にて(十) 親鸞 184 五木寛之 やがて念仏の合掌が静まる…

いつもきちんと生きていました

最近郁代に出会ってくださった方のブログに次のような内容がありました。 ・・・・・正岡子規のこんな言葉が書いてあった。「悟りということは如何なる場合にも平気で死ぬることかと思っていたのは間違いで、悟りということは、如何なる場合にも平気で生きて…

「いくちゃんに  あいたい!」

郁代が旅立ってしばらくしてからのこと。家族みんなで食事をしての帰り道、 車の中で突然Aちゃん(五歳)がさけんだのです。 「あ、いくちゃんのうたや!」 ♪ ぼくらは あいたくて〜 ただ あいたくて〜 ♪ 気がつけば、 ゴスペラーズの「Forever & More」が流…

みんなを見守ってね

郁ちゃんに供えたお花に、姪のSちゃんたちから これまでにいろんなメッセージカードが添えてありました。「いくちゃん だいすきだよ!」であったり、「いくちゃんへ 千の風になって、これからもみんなを見守ってね!」など。 もうすぐ4月、いよいよ進級です…

自分をゆだねる

「これは頭で考えてきめたことではありません。自分の計らいでもないのです。見えない大きな力、どこからともなくきこえてきた声が、わたしをそうさせるのです。わたしはいま、その大きな掌に自分のすべてをゆだねる気持ちになっております」 小説の範宴の言…

吉水の草庵にて    (七)

吉水の草庵にて(七) 「親鸞」 181 五木寛之 「法螺房どの」 範宴はまっすぐに目をあげて法螺房(ほうらぼう)をみつめた。「正直に申します。 わたしはこれまで、自分なりに、必死で学んできたつもりです。 きびしい修行にも耐え、僧としての戒も守り、…

誰のせいにもしなかった

郁代はこう言いました。「やりたい事をして、たとえ失敗しても決して後悔しないだろう。 あの時行けばよかったと、後悔したくないから」と。会社を辞め、ワーキングホリディでオーストラリアに行くと決めた時でした。 「自由に生きている人、好きなことして…

浅の川散策

家のすぐ横を、浅の川が流れています。 下流に向かってよく散歩します。 今日の浅の川は穏やかな水面でした。 昨年七月の、五十年に一度の氾濫がうそのようです。金沢の桜の開花は四月一日と報じられました。開花を待つ河畔の並木が、一ヵ月後には桜色に染ま…

いつかおまえに会いたかった

星野道夫の魂をゆさぶる写真と言葉の数々。娘が旅立った後、私は毎日アラスカのクマたちに会っていました。 少しずつ元気が出てきました。 木も、岩も、風も、 あらゆるものがたましいをもって わたしたちを見つめている。 人間の持つ哀しみと悠久なる自然。…

一番すきなのはねぇ〜     

郁代がシドニーにいるときの何よりの慰めは、姪のSちゃんたちから届く 電話や手紙でした。その頃Sちゃん(六歳)の好きな遊びの一つが、「誰が一番すき」さがし。 「一番すきなのはね〜」からはじまりました。「一番があいちゃんで、二番がママで、三番が……