あなたの意志と思うから
「あなたにあえてよかった」は最初自費出版したものでした。
郁代の友人や、オーストラリアの方々にお礼として届けるためでした。
「第二部」には、郁代に頂いた60人分の手紙が載っていました。
後に出版社が、「第二部」を除いた「あなたにあえてよかった」を出版したいと言ってきました。
「こんな悲しい出来事を公表する事、郁代はどう思うだろうか」と、私は悩みました。
でも、「出版社から持ち込まれる事も郁代の意志だろうか」と思ったのでした。
テレビ番組の時も、誰も働きかけないのに東京のテレビ局から話が舞い込みました。
「郁代はどう思うだろうか」と私はやっぱり悩み、
また、「郁代の意志だろうか」と思ったのでした。
そのころ、「あなたにあえてよかった」に寄せられたお手紙の一部です。
熊谷宗恵さん(当時 真宗大谷派宗務総長)
静子さんが娘さんとお別れせねばならない現実にいかに苦しみ悩んだことか、私などの想像を絶するものでしょう。
そんな中で、母と子がしっかりと手を取り合い、母子であることを確認し合えたことは、読んでいてうらやましいほどでした。
斉藤千代さん(梅光保育園長)
郁代さんが希望と自信をもって仕事に打ち込み、友人と交わり、
病を得られた時も最愛の人が送るエールにいつも支えられていらっしゃったことは、有る意味で、
三十四年間に倍以上の賜物が与えられての生き様だったのではないでしょうか。
立松和平さん(2007年 小説『道元禅師』で第35回泉鏡花文学賞受賞)
死んだらおしまい、死は敗北、というのではなく、
死は人生の一部であって、
その人の生涯を完結させるものだと34歳でなくなった大浦郁代さんは教えてくれます。
(新聞の紹介文より)