二番目に言いたいことしか人には言えない
『星野富弘詩画展』が金沢で開かれています。
やわらかな春の陽に包まれたような会場は、私と郁代の語らいの場でもありました。涙がとまりませんでした。
再発がわかって帰国した郁代は、これからの時間をどう使おうかと悩んでいました。
やりたいことを一つ捨て、二つ捨て・・・
お友達のところへ「お別れの旅」を始めたのでした。
私も郁代も、星野富弘さんの詩でどれだけ無言の会話をしたことでしょう。
よりの引用です。
二月二十五日〜三月五日
「いっておいで!」
万感の思いで見送る両親に手を振り、郁代は金沢駅のホームを発った。
私はこの時、一枚の絵はがきを郁代のバッグにそっと忍ばせた。
「わかっているよ。だいじょうぶ…」との私の思いが込められていた。
星野富弘「むらさきつゆくさ」
大好きなオーストラリアで、みんなに会えただろうか?
シドニーの空は青かったろうか?
頬を撫でる海からの風はやさしかったろうか?
このとき、絵はがきに私からのメッセージを書き添えたのでした。
「代わってあげられなくてごめんね」
次の詩も私と郁代のために用意されていた、と思い本にも記してあります。
星野富弘「れんぎょう」
母と子は、一番目に言いたいことは言えませんでした。
でもお互いに、しっかりとわかっている、と思っていました。