おまかせ
五木寛之氏は講演でよく次のようなお話をされます。
偉大な方便 五木寛之の言葉
親鸞までは「帰命の念仏」なんですが、蓮如からは「報恩感謝の念仏」というふうに教えるようになったんです。
つまり、「なんまんだぶ」というのは何ですかとお百姓さんに聞かれると、
蓮如は「ありがとうございます、おかげさまで」ということなんだよと言って、朝から晩までなにかというと「なんまんだぶ」と言いなさいよ、と教えた。
それでもう、朝から「なんまんだぶ、なんまんだぶ」、
物をもらうと「なんまんだぶ、なんまんだぶ」、
ごはんを食べて「なんまんだぶ、なんまんだぶ」と言うようになった。
そういう暮らしをしている人たちを「妙好人(みょうこうにん)」と呼びますけれども、それは蓮如の教えが庶民にひろがっていったんですね。
僕も、口に出すと抹香くさいから声には出さないけれど、
心の中では「ナムアミダブツ」
「ありがとうございます、おかげさまで」といつも言っています。
板橋興宗氏(元大本山總持寺貫首・曹洞宗管長)も、最近同じようなことを言われます。笑いながら・・・。
「立場上大きく言えないんですが、心の中でナムアミダブツ、
ありがとうございます、おかげさまで、といつも言っています」と。
五木寛之氏も、板橋興宗氏も、「おまかせ」の心境をこのようにおっしゃっていられるのですね。
本の発刊当時、「あなたにあえてよかった」(大浦静子著)を読まれた板橋興宗氏が、お手紙をくださいました。御自身の著書に添えて。
金沢の大乗寺にもいられたことがあるのです。
『私なりにこの本から受け止めるものがあります。
私もがんを手術しました。いま治療中です。
私の場合は年齢が年齢だというところが郁代さんと違うのですが、
体力のある限り生きつづけ、命の灯を輝かせたいと思っています』
「ありがとうございます、おかげさまで」が、
いつのまにか、郁代の声となって聞こえてくるのでした。