ビッキー

郁代は、逃れられない“今、ここ”を、精一杯生きようとしました。

病状が進み外出困難になってきた時に考えたことは子犬を飼うことでした。
郁代は「ビッキー」と名付けたコーギー犬を飼い始めたのです。

「待て!」「おすわり!」「「よし!」郁代の声が今も耳に残っています。

身体の自由がきかなくなった時、飼育をまかされたお姉ちゃんの日課は、
毎晩、ビッキーを郁代に会わせに行くことだったのです。
ベッドに飛びつくビッキーが、その頃の郁代の慰めになっていました。

3年経った今も、郁代の遺児(犬)ビッキーは我が家の宝なのです。