だれも教えてくれなかった

4年前、2年生だったSちゃんは、
1週間が過ぎた頃にいいました。


「いくちゃんが死んだとだれも教えてくれなかった」


何がなにやらわからないまま、あわただしく大人の後をついていき、
気がついたら、いくちゃんがこの世にいなかったのです。
いくちゃんとの別れに、納得できなかったのでしょう。


外出できなくなってからも、
オセロをして一緒に遊んでくれて、
「かくれんぼしよう」と言ったとき、
いままでのように相手をしてくれなかったけど、
いくちゃんがそんなに悪い病気にかかっているとは知りませんでした。
いつも、Sちゃんたちの前では明るくじょうだんを言って、
笑わせていたからです。
「いなくなる」なんて、思ってもみなかったことでした。


ベッドに寝ていたいくちゃんを見たのも、たった1回だけでした。
自分はしょっちゅう風邪をひいて学校を休み、
ベッドに寝ていることなんか珍しくありません。
大人だって病気になることは知っているけれど、
まだ若いいくちゃんがいなくなるなんて、
想像したこともありませんでした。


周りの人が泣いていたけれど、
なにやらいつもと違った雰囲気だったけれど、
言葉ではっきりと「だれも教えてくれなかった」のでした。


言わなくても分かっていると思っていたけれど、
小さい子にも、言葉できちんと伝える事がたいせつなのですね。
Sちゃんに教えられました。