1枚でよかったのに

ハンカチ3枚セット入りのきれいな箱を「仲良く分けて」、
と孫にやりました。


姉のSちゃんは「わたしは1枚だけでいい」と言うのに、
3種類の絵柄がどれも気に入ってしまった妹のAちゃんは
「いや!全部ほしい」といいます。
「右へ行こう」といえば、反対の「左へ行く」とゆずらないのが
Aちゃんのタイプなのです。

そんなわけで、姉の方が毎回妹にがまんさせられ、
「いつもAちゃんがいじわるする」とべそをかくのです。


ハンカチも妹が独り占めしてしまうという、
いつものパターンになりました。


実は同じのがもう1箱あったので、
「じゃあ、Sちゃんにこれあげるね」
と、姉の方に差し出した私。


「わたしは3枚の中から、あの1枚でよかったのに」
と言ってSちゃんはわたしの行為を喜びませんでした。
妹のAちゃんと“仲よく分け合いたかっただけなのに“と、
いいたかったようでした。


すぐ物を与えられ、
お互いが仲よくする機会まで奪われてしまう今どきの子ども達。
そんな可愛そうなめにあわせているのはこの私でした。
  

Sちゃんの悲しそうな瞳を忘れないでおこうと思いました。


仲よくする機会を奪われ“いじわるしたAちゃん”だって、
本心は楽しくなかったはずです。


Aちゃんには、
「Aちゃん大好きだからね」とだけいって抱きしめました。