感じる心はいろいろだから

ジャガイモの花
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「バシャバシャバシャ・・・」昨夜は叩きつけるような大雨、
「バリバリ・・・」「ガラガラガラ・・・」「ドッカーン」と雷が・・・
続いて「ワンワン!」「ワンワン!」雷が怖いビッキーが吠えまくり、
一晩中オーケストラの音が絶えませんでした。
朝はぐったりのビッキーさま、横になって休んでおられます。



かっこちゃんのエッセーに、
“雨の日の大ちゃんとの会話”があります。


みんな一つのいのちを生きている(7)  山元加津子
を転載させていただきますね。


「感じる心はいろいろだから」

                        
沖縄ではもうずいぶん前に梅雨に入ったのですね。


雨の季節になると、私はある日の大ちゃんとの会話を思い出します。


「秋の空気は つぶの すきまが 大きく見える」
「月は やっぱり さびしい目をしてる」


大ちゃんはとても素敵な詩をいっぱいつくります。


ある雨の日、小学校の問題集をぱらぱらとめくっていると、


「雨は( )降る、雪 は( )降る、風は( )吹く」
の( )に<そよそよ、しんしん、ざあざあ>
から言葉を選んであてはめるという問題がありました。


大ちゃんはどういうふうに答えるかなと思って、大ちゃんに
「雨は降るときにどんな音がすると思う?」
と聞きました。


大ちゃんは
「あっちの雨かこっちの雨か、そっちの雨か?」
と言いました。


私は大ちゃんの言葉を聞いて、すごくすごくびっくりしました。
ああ、本当にそうですね、雨が土に落ちたとき、
コンクリートのところに落ちたとき、葉っぱの上に落ちたとき、
みんな違う音をたてるし、
雨の降り始めと激しくなったときにも違う音をたてるのに、
私はそんな当たり前のことをすっかり忘れていたのでした。


そして、雨の音をただ、テスト問題としてしか考えていなかったのです。


大ちゃんはお部屋の中にいても、あっちの音、こっちの音、
そっちに振る音と聞き分けているのだと思います。


雨は降る数と同じだけの降る音があるそれなのに、
私はどうして雨の音はこうだと決めつけていたのでしょうか?


大ちゃんはこんな詩を作りました。


「あっちで地面にぶつかり こっちで雨が地面にぶつかり 
 ぶつかる音がいっぱいだから 雨の音は心に重いなあ」


本当に、雨というものはざあざあとふるものですよ、
風はそよそよ吹くものですよと押しつけてしまうのは、
とてももったいないことですね。



前に小学校に少し勤めていたことがありました。


そのときに、5年生の男の子で、
詩を書いたり、本を読むのが苦手なお子さんがおられたのです。


みんなで理科の時間、植物の生長を確かめに、外に出たときに、
男の子の手に、モンシロチョウが止まりました。


じっと動かないようにしている男の子と、手に止まった蝶に気がついて、
私も教室での理科のノート作りに戻ろうと声をかけようと思ったのを思いとどまって、
じーっと男の子を観ていました。


男の子は、そんな私に気がついて、手をそっと上にあげたのです。
モンシロチョウはゆっくりと飛び立って行きました。


そのあと、国語で詩をつくる時間がありました。
5年生になると、ずいぶん長文の詩をつくるお子さんもおられます。
その中で、男の子が作った詩はとても短い詩でした。


「ちよちよ たた とびたつ」


それだけの詩でした。
けれど、そこには、男の子の目線の優しさや、
自然を観てとるすばらしさや、
短い言葉の中に多くが含まれているようで、胸をうちました。


子どもたちの詩を額にいれて、廊下に飾ったときに、


「どうして、あの詩を飾るのか?」
「どうして直さないまま、飾るのか?」
「他の子どもにとっても、あの子にとっても、それはいいことではない」


というような意見がありました。


けれど、私にはそう思えなかったのです。
みんなの前で男の子の詩に、
私がどんなに感動をしたかということを話したのです。
そして、私はこの詩がとってもとっても好きと言いました。


いろんな考えがあります。
ちよちよは間違い。
ちょうちょと記すべきだという考えがあるかもしれません。
「たた」では何を表しているかわからないという意見もあるかもしれません。


でも、私は大ちゃんや子どもたちと出会って、
私たちがいいと思っていることにすべてをあてはめようとしていることが、
どこか違っている気がしてならないのです。


宮ぷーもレッツチャットという意思伝達装置を使うので、
とても短い言葉で思いを伝えます。
その中にはっとする優しい、美しい言葉があふれているように思います。


ベッドの周りでも粗忽だからすぐに転んだり、
柵に指をはさんだりしてしまうと宮ぷーは


「だいじょうぶ?」
「ゆっくりでいいから」
「つかれてない?」


と聞いてくれます。
胸がいっぱいになるのです。