“空から謡が降ってくる”

金沢歌劇座で行われた第41回大民謡まつり
県内を代表する14団体が唄や踊りで華やかな民謡絵巻を繰り広げました。

伝統ある民謡会、踊りで有名な社中と、
お知り合いの方も何人か出演されたのですが、ただ聞き惚れておりました。


その帰り道、
県立美術館横に出る近道を通り、如来寺前の小道を歩いていると・・・
背後から“謡”が聞こえてくるではありませんか。

若い男の方が教本を手に、歩きながら“謡”の練習に励んでいたのです。
「“加賀宝生”ですか?」
「はい、そうです」

ウオーキングしながらの発声、私と同じだなあと親しみを覚えました。
私の場合は浅野川の河川敷、誰も歩いていない通りで、
アオサギを相手によく詩吟の練習をします。


金沢のことを表す言い伝えに、
“空から謡(うたい)が降ってくる町”というのがあるのを思い出しました。

これは植木職人が木を切りながら謡を謡っていたことからそう呼ばれています。
庶民までも能樂に親しんでいた様子を表したもので、
藩政期、加賀藩の殿様が武家だけではなく、
庶民にも奨励したことによるものだと思われます。

兼六園に隣接する、公立としては全国初の石川県立能楽堂


前庭に立つ謡曲「杜若(かきつばた)」の像

能と詩吟のコラボで舞台で演じられることもあります。

そういえば能登に移住した、金沢生まれの職人だった父も、
結婚式などで『高砂や、この浦舟に帆を上げて〜』
と謡って、珍しがられていました。

金沢駅近くに住んでいたため、戦争末期には建物疎開の対象となり、
住めなくなって縁故を頼り疎開したのでした。