「王女メディア」

自らの運命を嘆き、呪い、そしてメディアは、復讐を決意する。
『この私をかよわい女、いくじのない女だと、誰に思わせておくものか──』

2か月に一度の金沢市民劇場の例会は、
幹の会+リリック座公演、『王女メディア』でした。
ギリシア悲劇の三大作家の一人、エウリーピデースの代表作です。

古代ギリシアの神話的事件が、いつの時代、どこの場所でも起こり得る普遍的ドラマとして展開してゆきます。
ギリシアアテネで30分近くにも及ぶカーテンコールに包まれた、
平幹二朗の『王女メディア』、
男性の地声で演じられるメディアは強烈で、猛々しく、人間の悲しみや怒り、様々な感情を大きなスケールで浮き彫りにしていきました。

37年前の初演以来、今も「身体の中に棲みついている」と語る『王女メディア』。
休憩なし、息もつかせぬ展開で二時間があっという間でした。
平幹二朗の渾身の想いが伝わってきました。

〈あらすじ〉
コリントスのある屋敷から女の嘆く声が聞こえてくる・・・。

かつて──黒海沿岸の国コルキスの王女メディアは、ギリシアのイオルコスからやって来たイアーソンと恋に落ちた。
イアーソンが金羊毛を手に入れるため、力を貸したメディアは父を棄て、
故郷を棄て、共にイオルコスへと向かったのだった。
そしてイアーソンから王位を奪った領主を殺害し、コリントスへと逃れてきたのである。

けれどもいま──イアーソンは保身のため、コリントスの国王クレオンの娘を妻に迎えることを決めてしまった。
クレオンはメディアとその二人の息子に国を出て行くよう命令を下す。
不実をなじるメディアに、イアーソンは子どもたちの将来のためを思って新しい縁組を承知したと言い募るのだった。

『さあ、まっすぐに怖ろしいことへつき進もう・・・
女と生まれた身ではないか。
善いことにかけてはまったくの力なし、けれども、悪いことにかけてなら、
何をやらせてもこの上ない上手と言われる、女と生まれたこの身ではないか』

自らの運命を嘆き、呪い、そしてメディアは、復讐を決意する。

『この私をかよわい女、いくじのない女だと、誰に思わせておくものか──』