ありがとう
ありがとう 笹田 雪絵
ありがとう、
私決めていることがあるの。
この目が物をうつさなくなったら目に、
そしてこの足が動かなくなったら、足に
「ありがとう」って言おうって決めているの。
今まで見えにくい目が一生懸命見よう、見ようとしてくれて、
私を喜ばせてくれたんだもん。
いっぱいいろんな物素敵な物見せてくれた。
夜の道も暗いのにがんばってくれた。
足もそう。
私のために信じられないほど歩いてくれた。
一緒にいっぱいいろんなところへ行った。
私を一日でも長く、喜ばせようとして目も足もがんばってくれた。
なのに、見えなくなったり、歩けなくなったとき
「なんでよー」なんて言ってはあんまりだと思う。
今まで弱い弱い目、足がどれだけ私を強く強くしてくれたか。
だからちゃんと「ありがとう」って言うの。
大好きな目、足だからこんなに弱いけど大好きだから
「ありがとう。もういいよ。休もうね」って言ってあげるの。
たぶんだれよりもうーんと疲れていると思うので。
「人は、愛するため、愛されるために生まれてきたんだよ」
誰にも愛されていない人はいないよ。
神様がここにいてほしいと思わなければ、ここにいるはずないんだもん」
と雪絵ちゃんは言いました
雪絵ちゃんと出会ったのは病弱養護学校という養護学校でした。
雪絵ちゃんは多発性硬化症、MSという病気を持っていたわけですけれど、雪絵ちゃんは口癖のように「私はMSであることを後悔しないよ」と言いました。
「MSである雪絵をそのまま愛しているよ」と言いました。
もしMSでなかったら違う素敵な人に会えたかもしれないけれど、私は今周りにいる人に会いたかった、かっこちゃんに会いたかったから、これでよかったよ。目が見えなくなっても、手や足が動かなくなっても、息をするときに、人工呼吸器をつけなくてはならなくなっても、私はMSであることを決して後悔しない。MSの雪絵を丸ごと愛している。
そういうふうに言い切る雪絵ちゃんはなんて素敵なんだろうと思います。
雪絵ちゃんの書いた本から紹介させていただきました。
郁代も、加津子さんの本を読み、自分を励ましているようでした。
亡くなる前には、
『本当のことだから』(山元加津子・著)も読んでいました。
- 作者: 山元加津子
- 出版社/メーカー: 三五館
- 発売日: 2004/06
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