「がんばれ」とはいえない
残り少なくなったある日、
「もうがんばれない」と郁代は言いました。
「これまでよくがんばったね。
よく辛抱したね。
本当によくがんばったね。
いっぱいいっぱいほめてあげるよ」
と言うのが精一杯でした。
身体は、どこをさわっても痛いので
こころで抱きしめました。
「病気の辛さより、家族のやさしさに気付けたことがありがたいことやわ」
と、翌日娘はつぶやいたのでした。
「ああ、わたしの辛さをわかってくれていたんだ・・・」
と思えたとき、娘はどんなにうれしかったことでしょう。