ウエディングドレス


 折り紙名人 Sちゃん(5年生)作  2008年8月




2004年11月7日、
シドニーを引き揚げた郁代は恋人Tさんに見守られ、
二人で我が家に帰ってきました。

「ほら見て! 指輪、頂いたの」
郁代の薬指にはダイヤの指輪がキラキラ光っていて…
婚約の報告でした。
「おめでとう!きれいだね」
胸がいっぱいで、他にはなにもいえません。
人生で一番幸せな時に、再発がわかったのでした。


「これからの治療のこと、何事も二人で相談して決めていくから、
私達にまかせてね」
二人はこの時、(必ず治してみせる)と
強く決意したに違いありません。
治療方針については二人にまかせ、私はそっと見守る事にしたのです。



しばらくたって、
ウエディングドレスのことが婚約者のTさんとの間で話題になったとき、
「お母さんが喜ぶなら着てもいいけど、
私は病気が治ってからにしたい」
と郁代はいいました。


「24時間テレビ」で再現された「お別れの旅」は、
2005年1月から始まったのです。
抗がん剤が、次々と効かなくなっていったのでした。