よかったね


             金沢城石垣


郁代が小学校に入学したとき、
私もちょうど1年生の担任で、同じ日にやっぱり入学式だったので、
父親が入学式に出席しました。
行ってやれなかったことは、ずっと悔やんだことの一つです。


残り時間が少なくなった最期のころ、
「親孝行できなくてごめんね」と郁代が言ってくれたのに、
「親孝行いっぱいしてくれたよ。楽しいこといっぱいあったよ」
と言ってやれなかったこと、やっぱり後悔しています。
お別れの言葉のようで、どうしても言えなかった・・・。


これまで、
出来なかったことを後悔ばかりしてきたように思います。
これからも続くでしょう。


でも最近、
よかったなあと思うことを見つけることにしました。


「お母さんの子どもに生んでくれて有り難う」
「おかあさんの子どもに生まれてくれて有り難う」


「いくちゃん、だいすきだよ」
「おかあさん、だいすきだよ」


こんな言葉をかわせたこと、よかったね。


「おかあさん、これまで完璧だったよ。
いつも必要なときに、
必要な人や、物や、ことがちゃんと用意されていたもの」


最期の夜に、大切な言葉を遺していってくれたこと、
有り難いなあ。不思議だなあ。
とても深い意味があるんだろうなあ。


「必要なときに、
必要な人や、物や、ことに出会うために、生まれてきたんだよ。
そのことがわかったよ」
と伝えたかったのかもしれないね。


郁代から、人生の宿題をいっぱい貰って、
本当によかったなあ。