「満月をきれいと・・・」のまえがき

予約してあった近くの本屋さん(Kabos)へ、
「満月をきれいと僕は言えるぞ」(三五館)
を受け取りに行きました。
わ〜い、うれしい!
正面入ってすぐに5冊平積みされていました。
表紙がとってもきれいで、目立っていたよ。
他の方にも買って頂きたいので、今回は予約分だけにしました。


本の「まえがき」を紹介します。

・・・・・

私の心は確かにここにあるのに、私の心が言葉となって届かない。
届かないどころか、
私の中に、心があることすら、誰も気がついてもらえない。
不安とさびしさに叫びたかった。
「助けて。わたしはここにいるの。気がついて!!」
そんな悲しい気持ちで目が覚めました。
夢から覚めたあとも、その状態にもし自分がおかれたら、
いったいどうしたらいいのだろうとそのことをずっと考えていました。


 ロックドイン・シンドローム(症候群)という言葉があります。
日本語で閉じ込め症候群と言われています。
思いをしっかりと持っていながら、身体のどこも動かないために、
自分の思いを伝達する方法がなく、心が閉じ込められた状態を言います。


 私の元同僚で親友の宮田俊也さん(宮ぷー)はそのロックドイン・シンドロームの状態にありました。
やがて宮ぷーはゆっくりではありますが、奇跡的な回復を続け、
動き出した頭や指の動きを意思伝達装置につなげ、
言葉を紡ぎだすようになりました。


ロックドイン・シンドロームに限らず、
何らかの理由で、気持ちを伝えたいと願いながらも、
伝えることのできない人たちは世界中に、数百万人、あるいは数千万人いると言われています。
そして、その多くの人が、意思伝達の方法が広まっていないために、
情報が届かず、そのために思いが伝えられないという現実があるのです。


近視には、メガネやコンタクトが必要と誰でも知っているように、
もし、世界中に、意思伝達の方法や意思伝達装置の存在が当たり前になっていたら、その現実は大きく変わっていたでしょう。


ただ、「しらない」というそれだけのために、
たったそれだけの理由のために、何年も何十年もの長い間、
心を閉じ込めて、目の前の人に「大好き」と言えない。
「ありがとう」と言えない。
「さびしかった」と言えない。
心が通わせられない。
そんなことがあっていいはずはないのです。


宮ぷーは脳出血のためですが、交通事故や他の病気など、意思が伝えられなくなる原因はいろいろあって、それは突然やってきます。
もし、自分が伝えられない状況になったときに、
自分がいくら方法を知っていても、周りの人が方法を知らなければ、
夢の中の私のように、思いを伝えることはできないでしょう。


広まっていないということが、人ごとではないのです。
自分もまた、いつその状況になるかわからないのです。


 私は、特別支援学校の教員を長くしています。
子供たちは、どんなに障害が重くても、必ず誰もが思いを持っていて、
誰もが思いを伝えたいのだということを教えてくれます。
一緒の気持ちを伝える方法を探して、見つかったときの笑顔は、
何にもたとえようのないほどの輝いています。


この物語は、宮ぷーや仲間がヘッドライトの光となって、
すべての人が気持ちを伝えられるように暗闇の中を照らしながら突き進む物語です。


そして、読んでくださるみなさんに、
「仲間になってください、意思伝達の方法があることを多くの人に伝えてください」というお願いの物語でもあります。


今日は月がきれいです。
宮ぷーはある日急に涙を見せて
「満月をきれいと僕は言えるぞ」と言いました。
きれいな月をきれいと言える、
大好きな人に好きと言える、
おいしいものをおいしいと言える、
当たり前のように私たちが思っていることが、
決して当り前ではなかったのです。
心が揺さぶられて私も涙がこぼれました。


 あなたも私も、そしてすべての人が、これからさき、
いつまでも、自分のあふれる思いを相手に伝えられるように、
「意思伝達大作戦」がはじまります。

・・・・・

宮プーレッツチャットでおはなしブログはここから



「おはなしだいすき」のページ


宮ぷー心の架橋プロジェクト