誰か一人でいいから





第777号 宮ぷー こころの架橋ぷろじぇくと  
                      2011年9月20日より

〈しーちゃんからのメール〉
何年も前のことです。
「一度失敗したら、もう、絶対にだめなの?もう取り返しがつかないの?」    しーちゃんが悲しそうに言いました。
「そんなことないよ。みんな失敗を繰り返してできるようになっているんだもの」
それでもしーちゃんは首を振りました。
「昔、私、悪い子だったの。人の物盗っちゃだめってわかっていたけど、つ
い、友達のものや、学校のものを家に持って帰ってしまったの。
でも、もうしていない。
悪いことだってわかったし、自分でがまんできるようになったの。
だからそんなことはずっとしていない。
でも、先生も、お母さんも、私のことは信じてくれてないの。
『おまえは盗みをするから、一人でバスに乗せられない、目を離せない』
って言うの」
しーちゃんの悲しみが私の心の中まで入ってきたようでした。
しーちゃんの顔をのぞき込むと、しーちゃんの澄んだ目が不安そうに私を見つめていました。


「人間の素敵なことは、いろんなことに気がついていけることだよ。何が大切で何がいけないか、どうしたらいいか気がついていけること。そして変わっていけることだよ。
私ね。こんなふうに思っているの、お互いに教えあったり、大切なことを気がつくために、人と人は出会うのじゃないかなって。
それから、出来事だってそうだよ。
大切なことに気がついて変わっていくために、人は出来事とも出会う。
しーちゃんは昔つらいことがあってよかったね。
そのために、大切なことに気がつけたんだもの。
こんどはしーちゃんが大人の人に教えてあげてほしいの。
人は気がついて変わっていけるんだよってこと。
それにもともとしーちゃんはいい子だもの」 
私はなんとかしーちゃんが元気になってほしくて、いろんなことを言いました。 それなのに、しーちゃんは泣き出してしまいました。


次の日、しーちゃんが手紙をくれました。
「かっこちゃん、私のこと、見ていてね。
私、強くなる。自分を好きでいたいから」
笑顔のしーちゃんを抱きしめて二人でいっぱい笑いました。
そのしーちゃんが、メールをくれました。


・・・・・
かっこちゃん、昔のこと覚えてる? 
私が「一度失敗したらもうだめなの?」って聞いたことがあったでしょう? かっこちゃんが私のためにワンワン泣いて、
「そんなことないよ、そんなことないよ。だってしーちゃんはいい子だって、私、知ってる」
って私を抱きしめてくれたでしょう?
あの日のこと。あの日は私の二度目の誕生日だったんだよ。
かっこちゃんが信じてくれる。
他の人は信じてくれなくても、かっこちゃんが信じてくれる。
だから、頑張ろうと思えたんだよ。
今ね、仕事をしながら大学に入ろうと勉強してるよ。
もう10歳も下の子どもたちと一緒にやらなくちゃならないけど、
私、教員になりたいんだ。
教員になれなくても、塾の先生になりたい。
今の仕事も好きです。
でもかっこちゃんみたいに、
誰も信じてくれなくても、私のことを、信じて抱きしめてくれる、
そんな先生をきっと求めてる子どもたちがいるから、
私はかっこちゃんのようになりたいんだよ。
・・・・・


私が泣き虫で、大好きなしーちゃんを抱きしめただけなのに、
そんなふうにしーちゃんがメールをくれました。
本当に、私なんて何もできないのに、
そんなこと言ってくれて涙がとまりません。
しーちゃんありがとう。
そして、思いました。
宮ぷーが倒れて、今意識も戻って回復を続けていることを思ったときに、
やっぱり誰か一人でいいから、心から信じてくれる人がいてくれることが大切なんだなって思ったのです。
私もそうです。しーちゃんがそう言ってくれる。
そう思ったら私もまた頑張れる。
本当にうれしいです。
                     かつこ



〈しーちゃんへの応援メール〉が今日のメルマガに載っていました。
あしたに続きます。


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