亡き娘と逢いし寒山寺


金沢市日中友好協会の西野正次さん(会長代理)から
「金沢蘇州姉妹都市締結30周年記念史」(西野正次執筆・編集)
を頂きました。
356ページもの力作、西野さんご苦労様でした。
そして、貴重な記念史有難うございました。



25周年の記念の年には蘇州市より「寒山寺・除夜の鐘」に招待され、
金沢市日中第22次訪中団として出かけたのですが、
その時のことも載っていました。
夫が大学以来の友人であることから西野さんに誘われ、
私達も参加させて頂いたのです。
郁代が逝って次の年、まだ涙も乾かない2006年の年末でした。
五年前の旅行記を読んで、とても懐かしく皆さんのことを思い出したのでした。



* 除夜の鐘声を聴く
21時50分、バスはパトカーの先導で寒山寺へ向かった。
寒山寺の五重塔はサーチライトに照らされて月光の夜空に高く浮かんでいた。
周辺は数万の市民で埋め尽くされていた。
人並みの群れが川の流れのように動いていた。
23時42分10秒、最初の除夜の鐘が境内に。10秒毎に鐘声は響き、
100回目で花火が上がり、花火は連続して打ち上がった。
午前零時に最後の108回目の鐘声が響いた。
月光の下、感動的な夜だった。  (抜粋)



*バスの中で
〈御仏の人〉〈心の詩人〉夫妻は1年半前に最愛の娘さんをガンで失った。
夫人は1周忌を前に追悼集『あなたにあえてよかった』を出版した。
「風の子いくちゃんは千の風になって大空を吹き渡っている」と、詩的な表現で著書に書き、バスの中で「私たちは娘と三人で旅をしています」と話した夫人に、詩人の魂を感じて〈心の詩人〉と命名させていただいた。
彼女は一文を寄せた。

   鐘の音の響きが、娘の声となって心に沁みてきました。
   「お父さん、お母さん、元気にしていますか?
   家族のみんな、旅行団の皆々様の健康と幸せを祈っていますよ」
   暖かい涙が頬を伝いました。
   娘もこの旅を皆さんと共にし、
   「あなたにあえてよかった」と言っていると思います。
      月あかり 諸行無常の鐘の音に 亡き娘(こ)と逢いし寒山寺 



人類の歴史は長いが人の一生は短い。
その短い人生の中で喜びがあり悲しみがある。
〈御仏の人〉〈心の詩人〉夫妻にとっても、この旅は再出発の旅だったに違いない。  (抜粋)



西野さんは〈微笑む人〉〈友好の人〉〈高級技術者〉〈探究者〉といったふうに、参加者全員にニックネームをつけるのが得意なのです。
貴重な体験をさせていただき、有り難うございました。
これからも、郁代に出逢う旅が続きます。



寒山寺といえば、有名な「楓橋夜泊」が浮かびますね。
寒山寺は、中唐の詩人で政治家でもあった張継の七言絶句「楓橋夜泊」によって広く知られています。


この詩は都落ちした旅人が、蘇州西郊の楓江にかけられた楓橋の辺りで船中に泊まった際、旅愁のために眠れぬまま寒山寺の鐘の音を聞いたという様子を詠ったものです。

   
   月落烏啼霜満天     月落ち烏啼きて 霜天に満つ
   江楓漁火対愁眠     江楓漁火愁眠に対す
   姑蘇城外寒山寺     姑蘇城外の寒山
   夜半鐘聲到客船     夜半の鐘声客船に到る


“月落烏啼霜満天”
私は習字で何度も練習したことを思い出しました。