煩悩あればこそ

鈴木大拙館からは、犀川の上流に向かって右岸を歩いて帰りました。





家から近い戸室山が遠くに見えました。







鈴木大拙妙好人』(法藏館)には、「森ヒナさん」のお話が載っています。
ヒナさんは石川県の方なので、お寺の法話でもよくお聴きしたことがあります。鈴木大拙博士が、北陸のこのお婆ちゃんに是非会いたいといって出会いが成立しました。


 ヒナさんは、
『わが機、ながめりや、あいそもつきる、わがみながらも、いやになる。
ああ、はづかしや、なむあみだぶつ』
『いやになるやうな、ざまたれ、ばばに、ついてはなれぬ、おやござる。
ああ、ありがたい、なむあみだぶつ』
と、自分では文字が書けぬので、我が子に書いて貰っています。
ヒナさんは、いやになるよな煩悩だらけのザマタレ婆であると歌っていますが、その歌を取り上げて、


大拙師「わが身ながらもいやになると書いてあるが、これあんたの煩悩やろ。この煩悩、半分わしに分けてくれんか?」


ヒナさん「いや、あげられん」


大拙師「なんでや?あいそもつきるような煩悩なら分けてくれんか?」


ヒナさん「いや、これは分けられん」


ヒナさん「この煩悩あればこそ、この煩悩照らされて(如来さんというはたらきに)であえたんや」


大拙師「そうやったな、儂もおばあちゃんの二倍も三倍も煩悩もっとるさかい、お互い、この煩悩大切に生きていこうな」




・・・・・
上流にある三つ目トンネルを通り抜けると、家の前に出るのです。
家近くからみた、山側環状の「崎浦涌波トンネル」(三つ目トンネル)