不条理

   雪を冠ると遠くからでも白山とわかる(中央)

             おおくわ橋から




大野更紗さんと糸井重里さんとの対談
『健全な好奇心は病に負けない』第9回の中で更紗さん、
「不条理については入院中にも、すごく考えました・・・」


「 難民キャンプへ行って、
子どもやお年寄りが目の前で
マラリア感染症で亡くなっていく風景を、
ただ見ていたこともありました。
なんにもできなかった。
生まれた時点で不平等なのは
あたりまえなんですが。
あまりにも不条理なんです。
どうしようもできない。


不条理については入院中にも、すごく考えました。
どうして自分がこんな難病になったんだろう、
何が原因か、因果関係はあるのかとか、
たくさん考えたんですけど、
不条理は不条理なので、
いくら考えても、やっぱり
理屈もへったくれもないんです」




「病気だけは、不条理だね。だれのせいでもないのにね」
亡くなる三週間前に郁代が言ったことが思い出されました。


・・・・・
「やさしい家族、すばらしい家族がいたということに気づいたよ。
病気になった辛さより、そのことがうれしく有り難いことやわ」
と郁代が明るく笑った。
身体は辛いはずなのに「有り難い」という言葉が聞けたことが不思議だった。
「自分を納得させられる理由がないから、苦しいよね」と私が言うと、
「病気だけは、不条理だね。だれのせいでもないのにね」
郁代は、遠くを見つめてそうつぶやいた。


「病気になんかならない、丈夫な身体に生んでほしかった…」
と嘆いた時期もあっただろうに、恨みの言葉は一度もなかった。
「今まで親しんだ友達に、お別れとお礼をいわなくちゃ。
連絡しないまま終わったら、〝私ってそんな軽い存在だったの?〟と後で落ち込んだらかわいそうだからね。
これから友達がいっぱい訪ねてくるから、よろしくね」


「ああひどい…」
「くるしいなあ…」
身体の状態は少しも良くならなかったが、
だからこそ郁代は、今できることをしたいのだった。       

あなたにあえてよかった」より
・・・・・ 
               
Webダカーポ
『Book of the Year 2011 今年最高の本』で、
「困ってるひと」(大野更紗著)が1位になりましたね。