入試の頃     

写生会の絵 郁代一年生

その頃は木造校舎だった(現在は鉄筋)
右上方にピンクのテープが張ってあるけど、
校内で入賞したのでしょうかね。


センター試験が始まったようです。
高校入試もこれからが本番ですね。
この季節になると入試にまつわるエピソードが思い出され、笑えてきます。
そのあと、なぜか涙が出てきます。



〜高校入試の頃〜
       (「あなたにあえてよかった」より)


中学三年になると高校受験のため、バドミントンの部活動は秋に終わる。
「お母さん、エレクトーン買ってほしいんだけど…。
今から習いに行くことにするわ!」
小学生の時には、ピアノを習っていたのに、
中学生になると、部活動が忙しくなってやめたのだった。
「受験のために習い事を止める話は聞くけれど、
今から始めるのは聞いたことがないわ」
「私が勉強しないこと、一番知っているのはお母さんでしょう?
時間をもてあまして退屈なんだもの」
「あんたの勉強するの見たことないわ」と以前私が言ったとき、
「学校の授業をちゃんと聞いているから大丈夫なの」と、郁代は答えたのだった。
 

二日間ある高校入試の一日目を終えた郁代は、
「今日は練習日だからエレクトーンにいってくるわ」
「どうぞ、お好きなようになさいませ」
母は、ビックリ劇に少しずつ慣らされていった。
「明日も試験なのに練習に来るなんてあんただけだわ!」
先生の方が仰天したと聞いた。


「(二日目の)入試の作文の題は『春』だったけど、
最近ニャンコと遊んだことをそのまま書けば良かったから簡単だった。
田んぼのあぜ道を追っかけっこしていたら、風は暖かくつくしが出ていて、
春があっちにもこっちにも感じられたんだよ」
試験を終えて帰宅した郁代は楽しそうに言った。
郁代は、「自然」という学習塾へ、毎日、真面目に通っていたのだった。



高校三年生の夏休み、もう部活動は終わっていたのだろう。
遊ぶ相手もいなかったのだろう。(*あたりまえじゃん!)
友達に誘われたのだろうか。
郁代には珍しく、「夏季英語特訓塾」なるところへ通い始めたが、
受験生の必死さは感じられなかった。
夏休みが終わった時、
「わかっていることばかりだったから、あまり役にたたなかったわ」
と、郁代はつぶやいていた。


何を考えているのか、あんたにはついていけないわ、もう…。
でも、そう思ったのは、それが初めてではなかったような気がした。


*追記です!
「役に立たたなかったって?そんなら塾の授業料5万円を返してよ!」
その時母が心の中で叫んでたこと、知ってた?郁ちゃん。
中学、高校時代を通して母が払った塾の授業料は合計5万円でした。