持って歩ける融雪装置



CD版法話録「心に響く法話シリーズ」
「お念仏に遇いて」は、
淨秀寺坊守藤原千佳子さんが話されていて、先日お会いした時いただいたものです。


その中から「持って歩ける融雪装置」のお話を引用させていただきました。



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私が毎年、お彼岸にご縁をいただいているお寺の法座で、必ずお参り下さるおばあさんがいます。
その方は、いつもお昼休みに
「奥さん、今年も会えました。本当に色々なことが起こりまして、また愚痴を聞いてください」と言って訪ねてきます。
その年は大雪で、おばあさんは山に住んでおられ、3月になっても雪がたくさん残っているそうですが、私の住んでいる町は融雪装置が道路についていて、朝起きると雪が融けています。


そういう会話をしていると、おばあさんが
「このばあちゃんにも融雪装置がある」
と言われます。
山にも融雪装置があるのか尋ねると、
「いやばあちゃんの融雪装置は持って歩ける。
どんな煩悩の雪が降っても、南無阿弥陀仏の融雪装置が融かしてくださるからありがたい」
と言われました。
実際に、日頃からお念仏のはたらきに遇っておられるから、
それこそ信心の智慧の言葉としてフッと出てきたのだと思います。
この方は色んなご苦労をされてきた方です。
だから、その身を通して教えを聞きぬかれたおばあちゃんなのです。


煩悩そのものがなくなるのではなく、
そのことに苦悩する思いが融けるのでしょう。
そういう方にお遇いすると、お念仏のご利益は、
私の思うようにしてくださるご利益ではなく、
その思い通りにいかない時こそ、そこで生きる力になってくださることだといただけるのです。
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お会いした時の千佳子さんの笑顔が浮かび、
いっそう温かい気持ちが伝わってきました。