『さびしいときは心のかぜです』

大ちゃんの詩に、いつも励まされます。

私が初めて大ちゃんに出会ったのは、
『さびしいときは心のかぜです』でした。
 
原田 大助 ・山元 加津子著   樹心社 (1995/09)


山元加津子さんのHP「たんぽぽの仲間たち」に、
「大ちゃんの詩」のコーナ−があります。

“一台のワープロ”は、今でも忘れられません。
・・・・・
2度目の春が過ぎようとしていた頃、私は一台のワープロを教室へ持ってきました。
ファミコンが上手な大ちゃんは、もしかしたらワープロも好きかもしれないと思い、大ちゃんにすすめるつもりで用意したのです。

大ちゃんは駆けるように寄ってきて「俺、これ好きやわ」と言ってくれました。
そして、大ちゃんはその使い方を1時間で覚えてしまったんです。
漢字の変換だけでなく、拡大なども思いのままです。

大ちゃんに「何書く?」とたずねると、「友達の名前を書く」と答えました。最初に大ちゃんが入力した言葉はクラスメートの泰範(やすのり)くんの名前でした。
「やすのり」と入力して変換しても「泰範」の文字は現れません。
どうするかなあと見ていると、「お家安泰」と入力して、「お家安」を消し、「模範」と入力して「模」の字を消したんです。

すごく驚きました。
そして、とてもショックを受けました。
私はそれまで大ちゃんに中学の教科書は難しいだろうと思って小学校一年生のものをずっと使ってきていたんです。

それから大ちゃんは、すぐにすごいスピードで文字を打てるようになりました。そして、打ち出される文章には大ちゃんの気持ちがいっぱいあふれていました。

ワープロの文字は、みんなが読むことができました。
「すごいね、すごいね」
とみんなが言うと、大ちゃんはとてもうれしそうでした。
大ちゃんはそのとき、文字は人に気持ちを伝えられると知ったんだと思います。

それから大ちゃんは、あれほど練習しても書けるようにならなかった「読める字」を書くようになりました。
きっかけは、一台のワープロでした。

 さびしいときは心のかぜです。
 せきして、はなかんで
 やさしくして ねてたら
 1日でなおる

これは大ちゃんがつくった最初の詩です。
ある日、私は病気で元気のない友達になんにもできないことを悩んでいました。
すると「山もっちゃん、どうした?」と大ちゃんが聞きました。
ちょうどそのころから、私のことを大ちゃんは「山元先生」ではなく
「山もっちゃん」と呼ぶようになっていました。

「友達が病気で元気がないの」と答えると、大ちゃんは、
「さびしいときは心のかぜです」
と言いました。
あんまりそのことばが素敵だったので、近くにあった紙に書き留めると、
大ちゃんはつづけて、
「せきして、はなかんで やさしくして ねてたら 1日でなおる」
と言いました。
そのことばも書き留めていると、大ちゃんが、
「俺も書くわ」と言いました。

大ちゃんが書いた字をコピー機で縮小してはがきにし友達に送ると、
その友達はとても喜んでくれて本当に元気になりました。

「大ちゃんすごいね、大ちゃんのはがきは、読む人を元気にするね」
というと
「元気になってよかった」
「はがきをつくるとうれしいか?」
と聞いてきました。
「うれしい」と答えると、
「山もっちゃんがうれしいなら、僕はもっともっとはがきを作るわ」
と言って、それから大ちゃんは素敵な詩や絵をたくさん書くようになりました。
・・・・・

誰にも心を開かなかった大ちゃんは、
山もっちゃんがうれしいならと、詩を書き始めました。

“大好きはうれしい”
かっこちゃんがいつも言っている言葉ですね。