心に吹く風 (7)

親鸞 完結編 五木寛之・作 
   179回 心に吹く風(7)

唯円との会話、昨日に続いています
一年の締めくくりは、このような内容でした。
五木さんにとって、大切な場面なのではないでしょうか。

(抜粋)
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「なぜならば、迷信におちいるとき、ひとは不安になり、
おそれおののき、心が暗くなる。
信というのは、その反対だ。
勇気がうまれ、心が明るくなる。
私がそうだった。

二十九歳で法然上人に出会い、百日その教えをきいて信をえた。
そのときは本当に自分が生まれ変わったように感じた。
死んだのち自分は光の国へいくのだ、と固く信じたとき、
生きていることがよろこびとなったのだ。
死後の不安をかかえているかぎり、人は幸せにはなれぬ。
わたしは法然上人のお言葉を信じた。
いまも信じている。

もし、万一、そのお言葉が嘘いつわりで浄土などなかったとしても、
わたしはすこしも後悔などしない。
だまされたと臍をかむこともない。
もしあのとき法然上人の教えに出会わなかったら、
わたしは生涯、無明の海を漂い続けた。
つくづくそう思うのだよ」

「はい」
唯円はみじかく答えて、頭をさげた。
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