「かわいいねえ〜」に込められた願い

京都からのお友達金沢駅の改札口で見送ったとき、こんな場面に出会いました。

送迎に来ていたタクシーの運転手さん、幼い女の子を連れたお母さんに、
「わあ〜かわいいねえ〜」「何歳?」
「2歳です」とお母さんもうれしそう。
乗車時間が近ずき、そのまま改札口を通って行かれました。

運転手さんの満面の笑みに誘われ、
「お孫さんがいらっしゃるのですか?」とお聞きすると、
「音信不通の子供に孫が出来ていたら、このくらいかと思ってね、
可愛いだろうなあと・・・」
「23年間連絡がとれていないので・・・わからないのですよ」

「震災の一番ひどかった名取市に住んでいたから、
生きていないかもしれないし・・・・」

音信不通なのは
「5億円の借金を背負ってね、それで離婚。
二人の子供は母親のもとへ行き、それっきり電話しても連絡が取れなくなってね」
「親戚に聞こうとしても『関係ない!』と、ピシャッと電話を切られるし・・・」

「呉服屋をしていたんだけど火事を出してね。
お客さんから預かっていた300万、500万する高級呉服が焼けてしまって・・・
事業は破産」

「別に悪いことしたわけではないんですよ・・・」

胸がいっぱいになりました。

「かわいいねえ〜」と言った時のこぼれるような笑顔には、
運転手さんの深い思いがありました。

お子さんたちは、今どこでどうして暮らしているのでしょうか。

郁ちゃん
思い出の旅の最終章でした。

人はみな、重い荷物を背負って人生の坂道を上っているのですね。
運転手さんの、ご家族への思いが届きますように、
エールを送ってあげてください。