ランドセル

ランドセル
             石垣りん

あなたはちいさい肩に
はじめて
何か、を背負う

机に向かってひらく教科書
それは級友全部と同じ持ちもの
なかには
同じことが書かれているけれど
読み上げる声の千差万別

入学のその翌日から
ほんの少しずつ
あなたたちのランドセルの重みは
違ってくるのだ

手を貸すことの出来ない
その重み
かわいい一年生よ。

     『レモンとねずみ』石垣りん、童話屋刊


朝の五分間、楽しい一日の始まり・・・
手をつないで歩く道、みくちゃんは一年生の郁ちゃんです。

大型トラックが行き交う近くの大通り、
横断歩道を一緒に渡ってから、一年生のみくちゃんを見送ります。

「いってらっしゃい!」
「いってきま〜す!」

毎日繰り返すこの言葉が、
ある日突然途絶えたとしたら・・・

栃木県で8年半前に起きた事件、
凶行に遭った女の子は小学一年生でした。

今朝の天声人語ではこの事件にふれ、
「ランドセル」の詩が紹介されていました。

そして、
・・・・・
石垣さんの詩は、一年生をただかわいいという言うのではない。
小さな肩に「人生」を背負いはじめる子らを、
静かに見守るまなざしに満ちている。
事件も虐待も、
万の目をこらして防ぐつとめが大人にはある。
・・・・・
と締めくくられていました。