『島』

青年劇場の「島」を観ました。 
『島』は、1951年、呉軍港近くの島に住む人々の被爆体験を描いた演劇です。
◎第4回(1958年)岸田國士戯曲賞受賞作品

2010年東京公演、そして3・11…。
奪われたいのち、遺されたいのちへの想いをこめて
堀田清美=作 藤井ごう=演出

3時間以上にもわたる大作ですが、
ドラマとして観客を巻き込んでゆく力にあふれているので、
長さを感じさせなかったのには驚きました。

広島で被爆九死に一生を得た主人公栗原学は、
教師の仕事を続けながら将来のことを思い悩む。

彼は島の人々に尊敬されているように見えるが、
その眼差しには、同情と、不安感と、恐れがひそんでいる。
「ピカさえ浴びなければよかったのに、おしいことをした」と、まるで彼の人生がもうそれで終わってしまったかのような言葉がささやかれる。

愛する人と本来ならなんら問題なく結ばれたはずなのに、“ピカを浴びた”ということによって別れざるをえない。

仕事も、結婚も、多くのものをあきらめざるをえないなかで、
学が決してあきらめないこと、それは“生きる”こと。

皮膚がずるむけになった背中の刺すような痛みに負けそうになったとき、
生きることへの意志を彼に与えたのは“島”という故郷の存在だった。

島に落ちてゆく夕日の赤い陽の光を見ながら、
主人公は、「くそ!生きてみせるぞ!」と拳を握り締めた。