「仏道に生きる 4」

平成14年(2002年)、元曹洞宗長板橋興宗によって、
大本山總持寺の開山瑩山紹瑾の生誕地に小堂建立。
平成21年(2009年)6月7日 、本堂・坐禅堂の落慶法要

御誕生寺本堂 


言葉を絶え切るために、
「なんまんだ、なんまんだ」とか、「ありがたし」「南無妙法蓮華経」、
なんでもいい。

  • 自分の好きなように「サンキュー、サンキュー」でもいいですね。


仏道に生きる                  御誕生寺住職  板橋興宗
                          き き て      金光寿郎
 
仏道に生きる 3」に続きます。

金光:  「煩悩無尽」という言葉がありますけれども、その煩悩というのは、
その隙間から出てくる。

板橋:  いや、いや。そうじゃないですね。
煩悩というのはグチグチ愚痴ることです
いろいろな欲求は人間のエネルギーです。
その善し悪しじゃないんですね。
それにグチグチする、まとわりつく考えですね。
それが煩悩です。

食欲や人間の肉体的な欲求がなくなったら、死人と同じです。
廃人になることはありません。
生き生きしながらまとわりつかない。
そこら微妙なところですね。理屈じゃないですね。 

金光:  それで、じゃ、そういう愚痴が出てきているな、と思いますね。
これは愚痴だなあ、と自分で気がつく。
愚痴をなくそうと思って、なくなるんですか。  

板橋:  愚痴というのは言葉で繋ぎますから、
「ああでもない。こうでもない」となります。
言葉を絶え切るために、
「なんまんだ、なんまんだ」とか、「ありがたし」「南無妙法蓮華経」、
なんでもいい。

  • 自分の好きなように「サンキュー、サンキュー」でもいいですね。

-
そういうふうにして、言葉を繋げない。
自分の持ち言葉を念じている。
誰でも必要です。
言葉で繋ぐとグチになる。

金光:  そういう時に、例えば「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経」という言葉を続けると愚痴でなくなるわけですね。  

板橋:  つぎつぎ考えこまないことが大切です。
私がよくみんなに言うんですが、
「夜、ご主人の帰宅を待ちわびている主婦は、亭主は今頃飲んでるのだろう。
若い女の子たちとキャーキャーやっているんだろう」と、
こう思うと、もういたたまれん。
私はご飯も食べないで、お風呂も沸かして待っているのに。

その時に女の人に助けられながらヨロヨロになって玄関から入ってきたら、皿など飛びますね。
イライラしているんですから。
その時に、
「亭主のバカ、亭主のバカ、バカバカ・・・」バカを口ずさんでいるんです。

その間にいつの間に
「バカバカ、なんまんだぶ、バカバカ、なんまんだぶ」、
「なんまんだぶ」を途中でチョコチョコ入るようになります。
で、心が落ち着くんですね。
その時に、「ただ今」というと、
「あらぁ、遅かったね」と、こうなるんですね。  

金光:  言葉を繋げない、という。  

板橋:  そうです。それが修行の根元ですね。
頭の中でグチグチ考えないで、その時の息づかいによろこんでいることです。

これは、平成十九年十月二十八日に、NHK教育テレビの
     「こころの時代」で放映されたものである。

「仏道に生きる 1」
「仏道に生きる 2」 
「仏道に生きる 3」