Kちゃんにしかできない役割
金沢東別院で同朋大会があり、
澤田秀丸師の法話「念仏にあう」をお聞きしました。
昨年まで輪番を務めた北海道旭川別院でのお話しの中で、
全盲のお子さん(Kちゃん)のお話しが心に残りました。
輪番(教務所長)は、旭川別院が経営する幼稚園、保育園の園長も兼務するのです。
お母さんの強い願いで、はじめてKちゃんを保育園で受け入れることになった時、
職員の意見は真二つに分かれました。
「けがをしたらどうする?」
「お母さんの願いを受け止めてあげたい。
自分たちにとっても学びの機会になるのではないか?」
園長の決断により受け入れることになりました。
Kちゃんが誰かに呼ばれて動こうとすると、
その子の前にあるおもちゃなど移動の妨げとなる物を、幼い子でも次々と除けてやったり、しぜんとやさしい気持ちが芽生えて行ったということです。
「KちゃんにはKちゃんにしかできない役割があるのです」
というお話しでした。
わたしが保育園に勤めていた時にも、同じような経験をしました。
「地域の子供と一緒に過ごさせたい」というお母さんの強い願いで、
全盲のけんちゃんを受け入れることになりました。
金沢市
「普通児と一緒の保育は前例がないので、
幼児の“障がい者通所施設”へ入所してはどうですか?」
「保育園は建物も健常児向けに作られているので、危険がいっぱいです」
保育園
「盲学校の開放日に、親子と一緒に保育者も参加し、これまで学びを続けてきたので大丈夫です」
初の試みとして金沢市が臨時保育士一人を加配、けんちゃんは入園できました。
祖父母を含め、家族みんなに愛されていたけんちゃん。
お母さんはいつもニコニコされ素敵な方でした。
「けんちゃん!」「けんちゃん!」
どうしたらけんちゃんが楽しく過ごせるか、
子どもたちは細かな気遣いをみせてくれました。
保育園の“つぶやき集”にけんちゃんの言葉が残っています。
あかちゃんの足をさわって
「あかちゃんのあしって、ちいさ〜い!」
(4歳児)
あるときお母さんが、
その後入園した、弟のゆうきちゃん(3歳)のつぶやきを見せてくださいました。
母 「ゆうきは あかちゃんのとき とってもかわいかってんよ。
ず〜っと目あけとって
ほかのあかちゃん みんな目つむっとっても
ずっと目あけとった」
ゆうき「じゃあ、(兄の)けんちゃんは?」
母 「ず〜っと目つむっとった。目あけんかった」
ゆうき「じゃあ あした ゆうきが けんちゃん産むげん。
そして かっこいい かっこいい
ず〜っと目あけとるけんちゃん 産んであげる。
けんちゃん いまでも目あけんもんね」
お母さんは弟ゆうきちゃんの言葉を、
「一生忘れないだろうな」とおっしゃいました。