「春、忍び難きを」

   忘れてはいまいか。
   ふるさとに置き忘れた生活を
   食卓に並んだ品々を
   創り主のことを
   七十年前のあの日のことを 

金沢市民劇場6月例会 劇団俳優座公演 
「春、忍び難きを」を観ました。

作/斎藤 憐
演出/佐藤 信・眞鍋卓嗣

この物語の舞台は松本ですが、
作者の斎藤憐終戦で日本に帰国し、身を寄せたのはお母さんの実家の岡山県
そこでの出来事がベースになっています。
食料や住居に困った時だけ身を寄せて、ほとぼりが冷めたら皆東京へ出て行ってしまい、結局、前からいる女性達と半病人の庄屋だけが残った。
そういう事に蓋をして、日本は復興し、発展しました。

『春、忍び難きを』。
忍び難く思ったのは、あきらかに劇に出てくる3人の女性。
戦後70年、本当に自分の生存を守ってくれた人や食べ物を作ってくれる人を改めて考えてみようと言うのが、この劇だと思います。
今回の劇でも、3人の女性は川口敦子さん等、初演の時のまま。
10年間練られた円熟の舞台でした。

〈あらすじ〉
・・・・・  
夫と息子と農耕馬を戦いに取られた村では、女たちが日本中の食卓を支えていた。
昭和20年、敗戦の終わりの12月、この年は、半世紀に一度の大凶作だった。
長野県の松本近郊・里山辺村の庄屋・望月多聞は、この地の村長であり、地主でもあり、たくさんの小作人を使っていて、この地の名士でもあった。
在郷軍人会長、大政翼賛会長、農会長も兼任していた。
満州開拓団も送った。

終戦を迎え、農業を嫌って出て行った子どもたちやその家族が相次いで帰郷してくる。
新婚間もない妻を残し、召集された次男・二郎はまだ戦地から帰還していない。帰還兵の幸田が二郎の戦友とあらわれ居座るのだが…。

そんな中、農地改革の波が、この地にも押し寄せてきた。
農地改革や教職追放などでおびえる男たち。
女たちはそんな男たちを尻目に黙々と農作業に精を出していた。

食料を目当てに帰郷した子供と家族たちは村を去り、季節のない都会に帰っていった。そして戦後が始まったが…。
・・・・・

今回は音楽堂の邦楽ホール(7日)であり、連日の金沢駅前通いです。
妹がチケットの世話をしてくれるので、忘れずに続けられます。
戦前戦後を母の実家のある農村で過ごした私にとっては身に沁みる内容、
とてもわかりやすく、あの頃の生活がよみがえってきました。