「からゆきさん」

「からゆきさん」
著者の嶽本新奈さんはまりんかさんの姪で、気鋭の女性学研究者ですね。
これまでのまりんかさんのブログから受ける印象としては、
さっそうとバイクで駆け抜ける女性で、親しみをもって読ませて頂きました。

この本は、山崎朋子『サンダカン八番娼館』や森崎和江『からゆきさん』で広く知られるようになった「からゆきさん」を取り巻く言説とまなざしの変容を、
時代を追って検証した書物です。

どの領域の研究においても、売春を職業とした女性を対象とする困難さがあるけれども、
「売春を特殊視する意識は社会的に構築されたものである」
であり、それゆえ、本書の課題を
「からゆきさんをめぐる言説がどのような社会的状況の中で発せられ、
どのように受容、あるいは排除され、
いかにしてそれが社会や彼女たちに作用したのかを検証すること」
とします。

本格的な博士論文が元になっていて、私が論評するには力不足なのが残念です。

「あとがき」で本の出版に際し励ましてくれた家族への感謝の思いを述べています。
「からゆきさん」への温かいまなざしがどこから来たのか、
ここで深く納得したのでした。

私にできることは、
「からゆきさん」の思いに「みみをすます」ことでしょうか。