金州城下の作

大地に豊かな実り

詩吟教室、最近の練習吟です。
 
  金州城下の作
山川草木(さんせんそうもく)轉(うたた)荒涼
十里 風腥(なまぐさ)し 新戰場
征馬(せいば)前(すす)まず 人語らず
金州城外 斜陽に立つ

“征馬前まず 人語らず・・・”
なんと荒涼とした光景でしょうか。
胸つぶれる思いがします。

〈本文〉
金州城下作   乃木 希典

山川草木轉荒涼
十里風腥新戰場
征馬不前人不語
金州城外立斜陽

〈通釈〉
山も川も草も木も、
すっかり荒れ果ててしまっている。
戦いのあったばかりのこの広い戦場には、
どこもかしこも、血なまぐさい風が吹いている。
あまりのわびしさに軍馬も進もうとはせず、また、
われ人とともにことばも無く、
金州城外の夕日の中に、
万感の思いで立ちつくすのである。

(注) 金州は、今の中国の東北地区、遼東半島の先端、
   大連の北東にあたる所で、日露戦争の激戦地であり、
   乃木将軍の長男乃木勝典戦死の場所でもあります。
   勝典中尉は、明治37年5月27日に戦死、
   乃木将軍は6月7日にここへ来て、
   わが子を含めた戦死者を弔ってこの詩を作った由です。
   
   なお、乃木将軍は11月30日に次男保典をも二〇三高地の戦いで失っています。