彼らは命令しないのです

近くの鎮守の森

〈折々のことば〉  327     鷲田清一

彼らは命令しないのです。

            半藤一利

1944年秋、零戦で敵艦に体当たりして散る特攻作戦が軍令部で起案された。
ある幹部が航空隊副長を言いくるめるため、
副長に任せるという上官の架空の意思を伝えると、
副長は上官が承知しているならと同意した。

そしてそれは「澎湃(ほうはい)として下からの熱意に」よるとされた。
誰も責任をとろうとしない体制は以後もずっと「志願」という形をとった。
作家の「昭和史」から。
                           2016・3・2