おくりびと (2)

娘が亡くなってからは、「生と死」に関する本をよく読んでいます。

アカデミ―賞受賞「おくりびと」の原作本は「納棺夫日記」ですね。

著者の青木新門氏のお話も、昨年お聞きすることが出来ました。

納棺夫日記」に次のような場面があります。


「顔もみたくない」「親族の恥」と自分に言った叔父が危篤になって、
仕方なく見舞いにいった。
・・・叔父の顔は、私を罵倒していた時の顔とは全く違う顔であった。
安らかな柔和な顔であった。
目尻からは涙が流れ落ちていた。
叔父の手が私の手を少し強く握ったように思えたとき、
「ありがとう」と聞こえた。
ありがとうと聞こえた瞬間、私の目から涙があふれ、
「叔父さん、すみません」
と両手で叔父の手を握って土下座していた。
 その後も叔父は、言葉にならない「ありがとう」を繰り返していた。
 その顔は、清らかで柔和な顔であった。
私の心から憎しみが消えていた。
ただ恥ずかしさだけがこみあげてきて、涙がとめどなく流れた。
 病院の外へ出ると、まぶしいほど光り輝く雪景色が広がっていた。


そして、
あの不思議な光に最も明快な回答を与えてくれたのは、
親鸞の『教行信証』であったと記しています。

納棺夫日記」は次のように終わっています。


親鸞はこの不思議な光が一如の世界をおのずからもたらすと信じて疑わなかった。

そして宇宙や星や地球上の生物などの生と死を越えた永遠の存在として、
また生きとし生けるもの一切に顕れ救ってゆく存在として、
この光如来に絶対の信をおいていたのである。

帰命無量壽如来  とわのいのちと
南無不可思議光  ふしぎなひかりに帰依します