もう会えない
「おかあさん、心配かけてごめね」
「やっぱり、おかあさんが一番やわ」
「Aさんの励まし、お母さんにはできなかったよ。
いくちゃんにとって、Aさんは特別な人だね」
オーストラリアに滞在のAさんはこのころ、
郁代から電話で「もう会えない」と言われたのだといいます。
Aさんには、動ける頃の自分を覚えていてほしいと思ったようでした。
二月にオーストラリアを訪れた時、
郁代は親しい友人にこんな胸のうちも語っていました。
「Aさんも辛いと思う。誰か相談相手がいればいいんだけど…」
このことは、ずっと後になってから、私が郁代の親友からお聞きしました。
「〝お母さんが疲れて倒れないか心配〟と、郁ちゃんが言っていました」
お見舞いに訪れていた友人が、帰り際私に言い残しました。