世界にイエスという

  
           芙蓉


家族との会食で、
「ここ(病院)の食事、すごく味付けがいいわ」
と言ったのでしたが、郁代の状態では、食べ物の味も、
本当はわからなくなっていたのでした。
それでも、病室に集まった家族が落ち込まないように、
気持ちがすこしでも軽くなるように、
郁代は明るくふるまっていました。


みんなが帰り、わたしと郁代、ふたりきりになりました。


「会いたい人、みんなに会えてよかった。
あしたから、わたしだけの時間にして、静かに過ごすわ…」


「これまで、お母さん、完璧やったわ。
必要なもの、必要なことが、いつも直ぐに用意されていたもの…」


力になれなかった…、助けてやれなかった…。
悔いる母を、郁代は「許す」といってくれていました。


世界を肯定しているように思いました。