エピソード


         やまぼうし



書類の整理をしていたら、
郁代の主治医Y先生から頂いた手紙を見つけました。

   
   この度は、郁代さんの追悼本を頂戴し、誠に有り難うございました。
   幼少の頃から変わらぬ、あの元気で自主的で、責任感が強く、
   他人思いの様子が手に取るように伝わってきました。

    本当に残念でなりません。 ・・・・・



Y先生といえば、郁代とのあるエピソードを思い出します。


   執刀したY主治医が、
   「写真を撮らせてください」と病室に入ってこられた。
   自分を撮るとばかり思った郁代は手櫛で髪を梳きはじめたのだが…、
   顔ではなく「手術跡」だとわかった。
   腹部の傷跡の長さ7㎝が通常よりかなり短いらしく、
   手術の実績が多いY先生にとっても、自慢のできるものだった。
   勘違いだったとわかった郁代は、照れくさそうに笑っていた。
              「あなたにあえてよかった」より



あのときの照れくさそうな笑顔が目に浮かびます。


もう一度、会いたいです。