思い出の神戸


郁ちゃん
親戚の神戸の石田さんご一家が、突然訪ねてくださったよ。
大学時代、よく可愛がってもらったね。
ご主人が歯科医院を開業したばかりで、
アルバイトにも通っていたね。


病状が進んで、ほとんど歩けなくなってから訪ねたのが神戸で、
これが、最後となるお別れの旅でした。
石田さんや、神戸の親友に会いにいったんだね。


若葉の美しい庭が眺められるおしゃれなお店で、
食事しながら郁ちゃんの思い出話をしたんだよ。


ああ、この席に、
なぜ郁ちゃんがいないんだろうと思ったら、
涙が出てきてならなかったよ。



「わたしも、そばにいるよ」
ふと、郁ちゃんの声が聞こえた様な気がしました。