林檎畑

   とおいその音をきくときに、
   凍ったこころはとけました、
   みんな泪になりました。


金子みすゞさんの深くやさしいまなざしに、
私の凍ったこころはとけました。



林檎畑
                     金子みすゞ


 七つの星のそのしたの、
 誰も知らない雪国に、
 林檎ばたけがありました。

 垣もむすばず、人もいず、
 なかの古樹の大枝に、
 鐘がかかっているばかり。


    ひとつ林檎をもいだ子は、
    ひとつお鐘をならします。


    ひとつお鐘がひびくとき、
    ひとつお花がひらきます。


 七つの星のしたを行く、
 馬橇の上の旅びとは、
 とおいお鐘をききました。

 とおいその音をきくときに、
 凍ったこころはとけました、
 みんな泪になりました。





大漁                     
                    金子みすゞ


朝焼小焼だ
大漁だ
大羽鰮(おおばいわし)の大漁だ。


濱は祭りのやうだけど
海のなかでは
何萬の
鰮のとむらひ
するだらう。