堤を切れ

御影堂(ごえいどう)門



宗祖親鸞聖人七百五十回御遠忌法要では、
はじめに「真宗宗歌」を歌いました。

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1.ふかきみ法(のり)に あいまつる
 身の幸(さち)なにに たとうべき
 ひたすら道を ききひらき
 まことのみ旨(むね) いただかん
                     (2.3略)
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新聞連載「親鸞」(五木寛之・作)149より抜粋しています。


あらすじ
 《雨乞いの法会で親鸞は、七日間不眠不休で念仏したが雨は降らない。
守護代の戸倉兵衛が、
親鸞を石でうてと群衆に命じたが誰も応じなかった。
その時豪雨になる。
 面目をつぶした戸倉は、溜め池に急行した。》



「わしの命じることを、しっかりきけ」
「溜め池に水が十分にたまったら、川筋に一番近い堤を切れ。
わかったか」
 おどろいた武士の顔が、青白くなった。
「なんとおっしゃいました?
あの、せっかく完成いたしました堤防を、切れと?」
「くどい!堤をこわすのだ。
裂け目をつくればおのずと水はあふれだす。
これだけの池の水が一気に川に流れこめば―」
戸倉兵衛はそのありさまを想像して身震いした。


戸倉兵衛の頭の奥に、外道院たちのいない広々とした河原の風景が浮かぶ。
これで河原はすべてわしのものだ、と、彼は思った。