ただ、因果の巡り合わせによって
わが身に起きた“溺れた子ども救出事件”は、
本当に不思議な出来事でした。
数え切れない、たくさんのご縁の積み重ねがあって、
たまたまそこを私が通ったのでした。
郁代が身体の異常を訴えたのは、
その年の暮れに帰国した時で、
それから二年半で郁代は亡くなったのです。
一瞬、私は恨みごとを言いました。
「私は子供を助けたのに、なぜ娘を助けてくれなかったのですか?」
よくよく考えれば、
助かった子供の命も、
救うことができなかった郁代の命も、
賜った命でした。
ただ因果のめぐる相なり
蓮如上人が瑞林庵におっしゃいました。
「看病をしたから病の人の命が助かり、
看病が不十分であったから死ぬわけではない。
ただそれは、因果の巡り合わせによって
現れたすがたなのである」と。
それを聞いて、瑞林庵も、
「そのとおりでございます」と申されました。