「食べたいのちです」



金子みすゞ記念館コラムよりお借りしました。

 

 おさかな             
                 金子みすゞ



海の魚はかわいそう


 お米は人につくられる、  
 牛は牧場で飼われてる、
 鯉もお池で麩を貰う。
 

 けれども海のおさかなは、
 なんにも世話にならないし、
 いたずらひとつしないのに、
 こうして私に食べられる。


 ほんとに魚はかわいそう。


                『金子みすゞ全集』(JULA出版局)



 金子みすゞさんは、「私とあなた」ではなくて、
「あなたと私」と考えた人です。
どちらも同じく大切と考えた人です。
こんな話をしてから、
「私たちの中にも、『あなたと私』がいます。
皆さんは自分の心臓を3秒だけ止めることが出来ますか。
できませんね。
では心臓は誰が動かしているのでしょうか。
私ではありません。私以外の誰かです。

 
 では、その誰かはだれでしょう」

 
 と尋ねると、最終的には、「私のいのち」という答えにたどり着きます。尋ねた私自身も、ここで終わっていたのですが、
先日、私が考えてもいなかったびっくりするような答えを言ってくれた小学5年生の男の子がいました。


 「食べたいのちです」


 そうなんですね。
私のいのちは食べたいのちによって生かされていたんですね。


 私の心臓は、私が食べたいのちによって動かされていたのです。

 
 今、「おさかな」が深く心にしみます。

                     金子みすゞ記念館 矢崎節夫