二番目に言いたいことしか

二番目に言いたいことしか
人には言えない
一番言いたいことが
言えないもどかしさに
耐えられないから
絵を書くのかもしれない
うたをうたうのかもしれない
それが言えるような気がして
人が恋しいのかもしれない

           「むらさきつゆくさ」  星野富弘



郁代の病状が進み、腹水でおなかがパンパンに膨れてきた時、
衣類を買いに私はデパートのマタニティードレス売り場に出かけました。
そこには妊婦さんが洋服を買いに訪れていましたが、
当然ながら一番幸せな時期。
郁代もごく最近まで、赤ちゃん誕生の未来に夢を馳せていたはずです。


そんな幸せな場所にいて、私が探していたものは・・・
あんなに辛いことはなく、今思い出しても涙が出てしまいます。
一番目に言いたかったあれやこれやを、
七年目に入り、やっと少しずつ語れるようになったなあと思ったのでした。


「あなたにあえてよかった」
にも、こんな箇所があります。
お別れの旅へと、オーストラリアへ出発する場面です。

・・・・・
「いっておいで!」
万感の思いで見送る両親に手を振り、郁代は金沢駅のホームを発った。
私はこの時、一枚の絵はがきを郁代のバッグにそっと忍ばせた。
「わかっているよ。だいじょうぶ…」との私の思いが込められていた。

 

                            

このとき、絵はがきに私からのメッセージを書き添えたのでした。
「代わってあげられなくてごめんね」
・・・・・


東日本大震災で被災された方々の手記が少しずつ発表されるようになりましたが、
一番目に言いたかったことは、
五年後、十年後になるのではないでしょうか。