「一緒に行こうね」

大学時代にはヨーロッパ一周旅行に一人で出かけた郁代でした。
親には「友達と二人で・・・」と言って安心させてね。



「Hola!  私は今、ニースにきています。
これまでにパリ、バルセロナ、ニースと訪れましたが、毎日が感動の連続です。
特にニースはパラダイスと言った感じで、太陽の光をおもいっきり浴び、
浜辺に寝ころんでいると、最高に幸せです」

      
卒業後は旅行会社で海外部門。
「明日から一週間、ちょっと行って来るね。
朝早いからお父さん送ってね」
と突然言いだしては驚かされました。
一年目にしてのオーストラリア添乗は一般募集のお客さんだったから、
個性豊かさんやら、トラブルメーカーさんもいたようでした。
40人のツアー客を一人で束ねるのは大変だったみたいですが、
郁代のモットーは
「お客さん皆に満足してもらうこと」。
夜になると誰にでも電話をしまくる困ったちゃんには、
徹夜で話し相手になって時間をかせいだり・・・。
陰の努力をちゃんと分かって下さったお客さん、
「問題児もいて大変だったでしょう。旅行が楽しく出来たのはあなたのおかげよ」
と旅行後には慰労会を開いて下さったのでした。
大学を出たばかりの若い娘が添乗員、
参加された方は、初めとても不安だったでしょうね。
その後、郁代は国内では納まらずオーストラリアで暮らすことになりました。


さて、郁代のDNAを受け継いだ(?)のでしょうか、
我が家にも「旅行が生きがい、乗り物大好き」の人います。
これまで、どれだけの意味不明、珍道中に付き合わされたことか・・・。


瀬戸大橋が出来ると、
前日は船で大橋をくぐる、翌日は往路が電車で、復路はバス・・・とか。


松葉ガニを食べに行こう』では、
鳥取まで乗り継ぎ乗り継ぎの旅で、寒い中あっちでもこっちでもの待ち時間。
金沢はカニの本場で観光客が訪れます。
どうしてカニを食べに?と思っていたら、やっとわかってきました。
本当の目的はカニではなく、ひたすら電車を乗り継ぐ旅をすることだった・・・。


二年前の年末、
上海からの帰りは日本の空港が雪で閉鎖されフライトできなくなり、
航空会社が用意した安ホテルに一泊することに。
誰もが落胆する中、
「旅行がもう一日増えてラッキー。こんな経験を一度したかったんだ」と。
開いた口が塞がらないとはこのこと・・・と憤慨した私でした。
今に始まったことではない、こんなことにはすっかり慣れてますけど!!
あの時も、国内移動は関空が便利だったんだけど、
「2005年開港のセントレラ(中部国際空港)を一度利用したい」
とのことで付き合いましたねえ〜。


生前、世界を旅してきては郁代が言いました。
「すごく良いところだったよ。お母さん、今度連れて行ってあげるからね」
「お父さん、今度一緒に行こうね。感動すると思うよ」


明日から5日間、郁代と一緒に旅に出ます。


自分が案内したかった旅先を両親が楽しむこと、郁代もきっと喜ぶと思うのです。
喜寿祝いの旅
郁代に会える旅は、これで何度目になるでしょう。