『大漁』


「私たちは野菜、お魚、お肉とたくさんの『命』を、“ただで”頂いていますね」

昨日、知り合いのお寺であった女人講での住職さんのお話です。
その中で、『大漁』を紹介してくださいました。

『大漁』     金子みすゞ

    朝焼小焼だ
    大漁だ
    大羽鰮(いわし)の
    大漁だ

    浜は祭りの
    ようだけど
    海のなかでは
    何萬の
    鰮のとむらい
    するだろう

朝の浜辺はあたり一面、網で揚げられたいわしの山で、
「大漁だ、大漁だ」とお祭りのような騒ぎ。
みすゞさんの目はそこから一転、
海のなかのいわしたちの葬式に光を当てています。

お話のまえの「御消息」拝読。
住職さんの声が温かく沁みてきて、
いつまでもお聞きしていたい気持ちになりました。
ご縁に遇わせて頂き、有り難うございました。

朝はカチンカチンの冷え込み。
近くでもあり、いつもなら歩いて行く私も、
坂道が不安だったのでタクシーを呼びました。

〈タクシー運転手さんとの会話〉

「H町のY寺までお願いします」
わかりやすい所なのです。

返事がないのでもう一度言ったら、
「そんな大きい声出さんでもいいやろう!」
と突然怒り出したのです。

運転手さんはすぐ近くにある会社に問い合わせています。
「そんなことわからんがか・・・とまた叱られた」といい、
どうやらご機嫌も悪そう。

「悪かったね、いいですよ。私が案内しますから・・・」
で、着くまでの10分くらいの間の会話です。

・・・・・
朝から嫌なことがあって、もう家へ帰ろうかと思っていたんや。
でも帰ったら母ちゃんに叱られるし・・・。

わしゃあ短気なところが欠点で、会社勤めは続かんがや。
腹が立つと我慢ができなくなり、
相手の家まで行って怒鳴りこんだこともあるがや。

母ちゃんとケンカしては「ボコン、ボコン」と殴るから、
10年耐えたけど、堪忍袋の緒が切れてとうとう出て行ったわ。
子ども二人はかあちゃんについて行って、音沙汰なしや。
「お父さんは会いたいんでしょう?」
そりゃあ会いたいけど・・・。

ああ、いまやっと思い出したわ。
そのお寺なら7〜8回ほど行ったことがあるわ。
タクシーは10年ほどやっているんやから。
今の会社は3年やけど・・・。

朝から上司と嫌なことがあって、
そればっかりが頭にあって、他のことが全く考えられんかったがや。
さっきまで家に帰ろうかと思っていたんやから。

どうしたらこの短気な癖がなおせるのやら・・・。
今の母ちゃんとは二年たつがやけど、しょっちゅうケンカになるわ。

「私も、カッカ、カッカすることあるよ。
そんな時はあとから、『さっきは言いすぎてゴメンネ』というようにしているんや」
・・・・・

運転手さん、胸の内を吐き出して少しは落ち着いたようでした。
「どうしたらこの短気な癖がなおせるのやら・・・」
いつまでも心に残っています。