ふるさとは遠きにありて
香林坊から歩いて犀川大橋を渡ると右に、
室生犀星(むろうさいせい)が幼少期を過ごした雨寶院(うほういん)があります。
ここより少し先に、
室生犀星記念館
。
2002年、生誕地跡に建てられました。
小景異情(その二)
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
実の両親の顔を見ることもなく、生まれてすぐに養子に出されたことは犀星の生い立ちと文学に深い影響を与えた。
この句の通り、
文壇に名を轟かすようになった後も金沢にはほとんど戻ることがなく、
そのかわり犀川の写真を貼っていたという。
べに鯛のうた
やなぎの枝にはおかしでつくった鯛
擬宝珠ぎぼしがつるされ
梅の花がつるされ
打出の小槌がつるされ
福と徳とをかたどったおかしがつるされていました。
その小枝はお正月の商家のいわいのおくりもの、
それを炬燵の上につるしながら
こどもたちは四月の春をまつのです。
四月まで枝に鯛はつるされ、
春がくると
それを青い川になげいれ、
青い川はそのべに鯛を
遠いうららかな海までおくっていくのです。
「動物詩集」より