視点をずらせば

妹が届けてくれた「清流」9月号を読んでいたら、
鎌田實さんの「生きるヒント」に、
ダライ・ラマの言葉が紹介されていました。

「慈悲の心があれば、必然的にチャーミングになります」

続いて次の文章が書かれていました。

・・・・・
スペイン・サッカーリーグのダニエウ・アウベス選手が、
プレー中に観客からバナナを投げ込まれた事件がありました。
黒人の彼を「お前は猿だ」と侮辱したのです。
しかし、彼はそれを怒らず、バナナを広い、皮をむいて食べてしまった。
人種差別に対し、冷静に抗議したのです。

この彼の行動に共感の輪が広がりました。
世界的に有名なサッカー選手たちが、
自身のブログで同じようにバナナを食べる写真を掲載し、
皮肉交じりに人種差別を批判しています。

「慈悲」とは“あわれみ“の心。
投げ込んだ人は、怒りを誘ってプレーを妨害しようとしたのでしょうが、
彼はその行為をあわれみ、当人がみじめな気持になるよう仕向けた。
冷静な大人の対処です。

「怒りを生じる時は、怒りを生じさせるものに考えを集中させず、
愛する人や物のことを考えれば、少しは心が静まる」
と、ダライ・ラマ

怒りは、何も生み出しません。
ちょっとだけ視点をずらせば、慈悲の心にたどり着けるのです。
・・・・・

これを読んで、
以前書いたことがある、故・高光かちよさんの「東京の運転手さんの話」を思い出しました。

人の知恵仏の知恵(NHK「こころの時代」)で、語っておられますね。

・・・・・
ある時、東京へ行ってタクシーに乗ったことがあります。
それでタクシーに乗って行き先を告げても返事もしなかったんです。
ああ、ご機嫌の悪い運転手さんだなあと思っていたら、いきなり、

「わしら、お客さんかて、荷物並みや」というんです、私にね。

それから、ああ、と思ったんですけれども、
ああ、そうか、荷物になればいいんだわと、ヒラリと荷物に変わったんです。
そして、
「運転手さん、この荷物大分古いから壊れんように運んでね」
と言って、黙っていました。

それからいろんな話を私にしてくれるんです。
丁度、方南町から大山町までだったから、近いから降りて、その時に、
「お客さん、気を付けて帰って下さいね」
と言うんです。
今度お客さんにしてくれたんです。
・・・・・

相手は変えられないから、自分が変わればいい、とよくお聞きしますが、
私にはなかなか難しいです。