亡きご主人への手紙

兼六園 四手辛夷(しでこぶし)


「本当にお父さん(ご主人)も家族みんなも、
最期までよい時間を過ごせました 。
『あなたにあえてよかった』の本に出会えたからこそです。
本当にありがとうございます」
と手紙をくださったHさんが、
郁ちゃんにお参りしたいと、7年ぶりに京都から訪ねてこられたのが1年前のこと。
私たちと一緒にHさんご夫婦で歩いた、
思い出のスポットめぐりをしたのでした。

自営業の工場の仕事一筋で、奥さんを振り向くこともなく、
ご夫婦での旅行など一度もしたことがなかった・・・
Hさんに諸々の不満が募り離婚を考えている時に、ご主人が発病しました。

一転、Hさんにご主人への感謝と後悔の念が一気にあふれました。

昨年おいでた時は、ご主人との“思い出通り”を歩きながら
「医療関係の本を読み漁っている時、
TSUTAYAで『あなたにあえて・・・』が目に入り、夢中で読んだの。
見ず知らずの郁ちゃんのお母さん(作者)に宛ててすぐ手紙を出したところ、
とても丁寧なお返事が届いて本当にうれしかった・・・」
と話されました。

夫婦で金沢へお別れの旅をしよう・・・
郁代のお別れの旅に心を動かされ、ご結婚以来初めての旅でした。
我々夫婦と2日間過ごし
夜は我が家の近くの温泉へ、「男ふたり」「女ふたり」で入りました。

「郁代は病気だけを相手にするのではなく、
残された大切な時間に、やりたいことをして、
自分らしい時間を過ごそうとしました」
とその時話させて頂いたのですが、
Hさんのご主人は、
自分が大切に守ってこられた工場に最期の二日前まで出勤されたそうです。

その間、ご家族の心がひとつになって、食事をしたり旅行をしたり、
ご主人との思い出の時間を持たれたのでしたね。

今年一月の命日を迎えて書かれたご主人への手紙が、
Hさんから送られてきました。(一部省略)

・・・・・
天国のM(実名)さんへ
本当に年月の経つのは早いですね・・・
もう、七回忌になりました。
平成21年1月・・・
あの日のことがまだ昨日の事のように鮮明に残っています。

夫婦仲良く買い物をしている方の姿に目をそむけたり、
同じ車を見かけたら見入ったり、
うしろ姿が似た人にドキッとしたり、
私はひとりなんだと、心切なく涙することがまだまだあります。

Mさんの手のぬくもりをこの手に感じたい・・・
Mさんの声を近くで聞きたい・・・
私を見つめるまなざしを確かめたい・・・と、
叶わない事と知りつつ思いを募らせています。

心配だった4人の子供の近況、報告しますね。

あの日二人目の子供が生まれたばかりだったKは、
今や三人の娘の良きパパとなっています。
もう熊本に行って九年になり頑張っています。

あの日成人式を迎えたY子は二人の子供のママになっていますよ。
振袖姿きれいでしたよ。

あの時高校一年だったSは、管理栄養士を目指し京都の大学に入り、
一人暮らしにも慣れがんばっていますよ。

あの時まだ小学六年生と小さかったH香も夢を実現するため、
高校卒業後の四月からは、京都の製菓技術専門学校に進みます。
一人暮らしで頑張るでしょう。

みんなそれぞれ頑張っていますよ。
安心してください。

道をそれることなく歩いていられるのは、きっとお父さんが空から、
時には太陽となり、星となり、風となり、
子供の足元を照らし見守っていてくれるからですね。
ありがとうございます。

会いたいなあ・・・
Mさん これからも頑張ります。
見守っていてください。
・・・・・

「郁ちゃんに会いに、また金沢へいきます!」といわれるHさん、
お待ちしていますね。