「代わってあげれなくてごめんね」
むらさきつゆくさの季節にはいつも思い出します。
「むらさきつゆくさ」
星野富弘
二番目に言いたいことしか
人には言えない
一番言いたいことが
言えないもどかしさに
耐えられないから
絵を書くのかもしれない
うたをうたうのかもしれない
それが言えるような気がして
人が恋しいのかもしれない
「あなたにあえてよかった」 に、こんな箇所があります。
主治医がドクターストップをかけるか迷った末の、
“お別れの旅”へとオーストラリアへ出発する場面です。
・・・・・
「いっておいで!」
万感の思いで見送る両親に手を振り、郁代は金沢駅のホームを発った。
私はこの時、一枚の絵はがきを郁代のバッグにそっと忍ばせた。
「わかっているよ。だいじょうぶ…」との私の思いが込められていた。
「代わってあげれなくてごめんね」
・・・・・
郁代はこの絵はがきを旅から持ち帰り、ずっと大切にしていました。
東日本大震災で被災された方々の手記が少しずつ発表されるようになりましたが、
一番目に言いたかったことは、
五年後、十年後、いや、まだまだ先になるのではないでしょうか。