2015-08-29 あるとき不意に向こうから 折々のことば 〈折々のことば〉 146 鷲田清一「わかる」ということには、言葉がはじかれている領域がある。 小池昌代お経の勉強などしたこともなく、だからたぶんお経も呪文のようなものなのだろうに、 詩人の母は「聞いていればわかる」と言う。 お経の意味は、繰り返し聞いているうち、あるとき不意に向こうから、 身体の奥にまで染み込んでくるものなのだろう。 「耳で聞く」「頭で考える」とあたりまえのように言うが、それはかなり雑な物言いである。 「散文集 産屋」から。 (2015.8.28)