あるとき不意に向こうから


〈折々のことば〉  146          鷲田清一

「わかる」ということには、言葉がはじかれている領域がある。
                             小池昌代

お経の勉強などしたこともなく、だからたぶんお経も呪文のようなものなのだろうに、
詩人の母は「聞いていればわかる」と言う。
お経の意味は、繰り返し聞いているうち、あるとき不意に向こうから、
身体の奥にまで染み込んでくるものなのだろう。
「耳で聞く」「頭で考える」とあたりまえのように言うが、それはかなり雑な物言いである。
                   「散文集 産屋」から。                                    
                              (2015.8.28)